日本において児童虐待は年々増加しています。
2010年の虐待の相談件数は、50,000件だったのに対して、2020年には20,000件と約4倍まで増えてきています。
虐待の認知が広まった来ていることも要因の一つだとは考えられますが、【子供の虐待】と聞くと、叩いたり、けったり、激しく揺さぶったり、熱湯をかけたりという、身体的な虐待を思い浮かべがちです。
もちろん多くの虐待がこの【身体的虐待】ではありますが、他にも子供に対する虐待には種類があり。【身体的虐待】以外でも虐待にあたるという事実が、10年間で4倍もの虐待の相談件数の増加要因と考えられます。
どのような親の行為が虐待にあたり、親である我々が日々の行動を見直すとともに、虐待を行ってしまう親自身が、子供の時に虐待の被害者であったことが多いとされています。
虐待自体は絶対にあってはなりません。この負の連鎖を止める責任が我々親世代にはあります。
そのために虐待の種類と、対応策を知ることで、この負の連鎖を断ち切りましょう!
虐待としつけの違い
虐待について考える際、【しつけ】との違いについても理解しておく必要があります。
虐待事件のニュースが報じられると、多くの親が「最初はしつけのつもりだったが徐々にエスカレートして虐待に発展した」と口にしています。しかし、この二つには決定的な違いがあり、しつけの延長線上に虐待はありません!
しつけとは、
子どもの人格や才能などを伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにすることなどの目的から、子どもをサポートして社会性を育む行為
つまり、親のいうことをよく聞く従順な子にすることが「しつけ」ではなく、子どもが社会性を身につけることが「しつけ」といえます。
子どもが言うことを聞かないから殴ったというのは虐待となり得るのです。
虐待の種類と分類
虐待と聞くと、上記のような【身体的虐待】一番に思い浮かべます。
そのため【身体的虐待】においては認知が進み、親としても十分に注意している人も多いと思います。
しかし、虐待は【身体的虐待】だけではなく、他にもあるのです。
児童虐待は、以下の4つに分類されています。
身体的虐待
子どもの身体に外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行を加えること。
・首を絞める、殴る、蹴る、投げ落とす、逆さづりにする
・激しく揺さぶる。
・熱湯をかける、やけどさせる
・溺れさせる
・冬戸外に閉め出す
・意図的に子どもを病気にさせる
など後遺症が残ったり、死に至ることもあります。
心理的虐待
子どもに著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
・言葉でおどす、脅迫する
・子どもの心を傷つける言動をくり返す
・無視したり、拒否的な態度をとる
・きょうだい間で差別的な扱いをする
・子どもの目の前で配偶者などに暴力をふるう
など、子どもの心に不安やおびえなどを引き起こします。
性的虐待
子どもにわいせつな行為をすることやさせること。
・子どもへの性交、性的ないたずらをする
・性的行為を強要する
・性器や性交を見せる
・被写体とする
など、異性への嫌悪感を植えつけるなど、子どもの心身に大きな傷を残します。
ネグレクト
子どもの心身の正常な発達を妨げる著しい減食または長時間の放置そのほかの保護者としての責任を著しく怠ること。
・適切な食事を与えない
・ひどく不潔なままにする
・病気やケガをしても病院へ連れて行かない
・乳幼児を自動車や家に置き去りにする
・家に閉じ込める
・子どもにとって必要な情緒的欲求(愛情など)に応じていない
・同居人が虐待をしていても放置する
など、栄養失調や脱水症状などで死に至ることもあります。
虐待に至る原因
子ども虐待が起こる背景は、多くの場合一つではありません。
身体的、精神的、社会的、経済的などの要因のいくつかが複雑に絡み合い、その結果として生じるのが子ども虐待と考えられます。
子ども虐待に至るおそれのある要因(リスク要因)
保護者側のリスク要因
・望まぬ妊娠、10代の妊娠
・子どもへの愛着形成が十分に行われていない。
・マタニティーブルーや産後うつ病など精神的に不安定な状況
・もともとの性格が攻撃的・衝動的
・精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存
・被虐待経験
・育児に対する不安やストレス
・保護者が未熟
子ども側のリスク要因
・乳児期の子ども
・未熟児
・障害児
・何らかの育てにくさを持っている子どもなど
環境のリスク要因
・未婚や単身家庭
・内縁者や同居人がいる家庭
・子連れで再婚した家庭
・夫婦関係を始め人間関係に問題を抱える家庭
・転居を繰り返す家庭
・親族や地域社会から孤立した家庭
・経済的に不安定、不安のある家庭
・夫婦不和、配偶者からのDV等不安定な状況にある家庭
・公的なサービス(健診等)に参加していない家庭
上記のような要因がある場合は虐待が起きやすいと考えられますが、もちろんこうした家庭で必ず虐待が起きるというわけではありません。
虐待が子供に与える影響
PTSDとは…
死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まる、辛さのあまり現実感がなくなるなどの状態に陥る事
虐待に陥りやすい親の特徴
ここでは虐待に陥りやすい親の特徴を考えていきたいと思います。
どれも多くの親に当てはまる内容に驚くと思います。
つまり、子供のために一生懸命やっている事、如何ともしがたい環境にあって、ちょっと逸れるだけで簡単に【虐待】に陥ってしまう、リスクが常にある事を知って欲しいと思います。
子育てに情熱的
親自身の向上心が高く、子育てに積極的な半面、過剰に子どもに干渉(過干渉)してしまいます。
キャリアを捨てて子育てをしている親などは、自分が犠牲を払っている対価を子供に求めがちです。
自分の考えや価値観が正しいと思い込み、それを子どもに押し付け、自主性や自我の発達を疎外することにより、親子間が不和になり、虐待に発展することがあります。
子育てに無関心
子どもを産んでも母親としての自覚が芽生えず、子育てしないことに関して罪悪感を感じない親というのも残念ながら少数存在します。
またママは教育熱心だが、パパは無関心のように、夫婦間で子育てに対する熱量に大きな差が生じている場合も同じくリスクを伴います。
ネグレクト(育児放棄)につながりやすい親のケースとなります。
子育ての方法が分からない
例えば「乳幼児揺さぶられ症候群」のように、はたから見ればすぐに危険とわかることも、よく知らずにしていた行為が虐待につながってしまうケースがあります。
乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)とは…
赤ちゃんを激しく揺さぶることで、表面的な外傷はないものの、赤ちゃんの脳に重度の損傷が生じることをいいます。
精神的・経済的余裕がない
例えば、シングル親のように一人で子育てと仕事を両立しなければいけない状態の家庭においては、仕事が子育てに、子育てが仕事に相互に悪影響し合い、精神的にも経済的にも不安定になることがあります。
精神的・経済的に余裕がなくなると、その焦りやストレスの矛先が子どもに向かってしまうリスクがあります。
孤独・孤立している
近くに助けてくれる親や親族がいない、相談できるママ友、パパ友がいないような環境においては、思いや悩みを相談することが出来ず、さらに深く考えてしまいがちです。
最近は、SNSの発展により、子育ての情報は誰もが気軽に収集できるようになりました。一方で、その膨大な情報を前に何が正しいのか整理できず、さらに混乱や過剰に心配になったりもします。
そのことから冷静な正しい判断が出来ず、知らず知らずに【虐待】に陥ってしまうリスクがあります。
虐待に至らないために出来る事
外部とのつながり積極的に作る
虐待にいたる多くのパターンが、孤独で誰にも相談できない状態で、誰にも見られないところで行われるものです。
育児や教育に困った時に相談したり、同じ悩みを書ける人と話を聞き合ったりすることはとても素晴らしいです。
近くにい親や友達がいない場合でも、公的機関は相談に乗ってくれます。悩みを打ち明けることは何も恥じることはありません。一番恥ずかしいのは、自分の立場を守るため、子供を傷つけ、将来奪っているのに、それを周囲に隠す行為です。
お子さんのためと何より自分のために行動してください。
また外部との接触機会を意図的に作り、チェック機能をそこにゆだねる環境を常に作っておく方が安心です。
常にセルフチェックをする
厳しいようですが、チェックリストで、5個以上チェックがついた場合は、親や友人、学校や近くの公的な相談窓口に相談するという選択を考えて下さい。
相談窓口:こども家庭庁
まとめ
子供は自分とは違う人間です。思うようにならないのが当たり前です。
完璧にこなそうとすればするほど、窮屈な育児、子育てになってきます。
子供はあなたに無償の愛を送ってくれる素敵な存在です。
そんなかかけがえのない存在を、大切に育てたいという思うが強すぎるがゆえに【虐待】にいたるとはなんと不幸なことなんでしょうか…
しかし現実的に起こりうる流れはそのようなものが多いです。
もう少しゆとりをもって、頑張り過ぎないことが【虐待】にならない事には大切なのではないでしょうか?
子供は、我々社会の宝です。その宝物を傷つけることがないようにしていきましょう。その一助になれれば幸いです。